記事一覧
日記(0)
MLB(39)
お知らせ(0)
今後はこちらのブログに変更になります

2013年05月04日

投球メカニクス(投球論)@、300勝投手ゲイロード・ペリー(Gaylord Perry)編

 大リーグで300勝以上挙げている投手は現在までにわずか24人で、今は先発5人分業制が主流になっているので今後300勝以上達成できる投手はなかなか出てこないのではないかと言われています。24人の内、第2次世界大戦以後に300勝を達成した投手は12人です。

 ゲイロード・ペリーは不正投球スピット・ボール(唾、ワセリン、歯磨き粉とかをボールに付けたり、爪等でボールに傷を付けたりしてボールに大きな変化を付ける行為)で有名な投手ですが、すばらしい成績を残しています。1920年まではスピット・ボールは禁止されていなかったという歴史があるせいか、スピット・ボールに対しては規制が甘いようです。薬物に対しては厳しいのですが。禁止になった理由はスピット・ボールが打者の頭に当たって大リーグ史上、事故による2人目の死者が出たからです。

 ゲイロード・ペリーは1962年から1983年まで22年間(44歳まで)サンフランシスコ・ジャイアンツを中心に8つのチームで活躍しました。

 大リーグ通算記録:314勝265敗、防御率3.11、奪三振数3534、四球率2.3/9回、三振率5.9/9回
 サイヤング賞を両リーグで一回づつ受賞、ノーヒット・ノーラン1回。
 15勝以上を連続13年続けました。これを上回るのはサイ・ヤングの15年と、グレッグ・マダックスの17年だけです。

ゲイロード・ペリーはスピット・ボールで有名な投手ですが、投球フォームはサイドハンドスローに近く、肩を横に回転させる投げ方で、制球も良く、肩、肘の故障もなかったようです。

 フォーム的には現在の大リーグで主流の投げ方に近く、非常に良い投げ方だと思います。大変参考になる投げ方だと思います。

 ゲイロード・ペリーの投球フォーム
gaylord perry slow1.gif

 ゲイロード・ペリーの投球フォーム(連続写真)
gaylord perry 1-4 frame520.jpg
gaylord perry 5-8 frame520.jpg
gaylord perry 9-12 frame520.jpg

 投球メカニクス(pitching mechanics)

 メカニクスとは技法、手順、力学といった意味ですが、投球メカニクスはうまく翻訳しづらい用語です。投球動作の連動といった意味ですが、しっくりこないのでそのままメカニクスを使わせてもらいました。

 ゲイロード・ペリーの投球メカニクスは肩を横に回転させる投げ方で、サイドハンドスローに近い投げ方です。ボールのリリースポイントあたりで腕はほぼ地面に水平で、アトランタ・ブレーブスのクローザー、クレイグ・キンブレルとほぼ似たフォームです。

 それでは、投球フォームの連続写真の流れに沿ってゲイロード・ペリーの投球動作を見ていきましょう。

投球動作の段階
pitching motion phase.jpg

@ワインドアップの始めの姿勢

 ワインドアップとは巻き上げるといった意味で、腕、足を巻き上げるように上に持ち上げる動作です。ゲイロード・ペリーはホームプレート方向を向いた姿勢からワインドアップを始めています。日本の投手に多い動作です。現在のアメリカではあまり見ない動作です。

Aワインドアップ

 左脚の膝を右脚の膝よりも2塁側に回転させて、股関節を十分に内旋させており、その結果、背中がホームプレートの方向を向いています。上半身と下半身が十分に捻られています。

 これは肩を横に回転させるのに必要な動作です。ここで注目したいのはどの高さで上体を捻るかです。背中を見ると背中は平らで捻られた感じがしません。股関節の高さで上半身と下半身が捻られているからです。つまり股関節の内旋で上半身と下半身が捻られているからです。

 腰から上を捻るのはあまり効率的とは言えません。腰を回転させる専用の筋肉はないので、腰を回転させる動作は遅く、大きな力も出ないので補助的な役割でしかありません。大事なのは股関節を使って骨盤を素早く回転させることです。その結果、骨盤の上にあるすべてが回転するので、肩も水平に素早く回転します。

Bコッキング前期、テイクバック始め

 コッキング(cocking)とは上に向けるといった意味で、cockはオスの鳥のことで、動詞としては上に向ける(頭か羽かよくわかりませんが鳥の動作から来ているのでしょう)という意味があります。
 右腕は下げたままでセンター方向には引いていません。体が前に移動するので腕はそのまま慣性に従ってそのまま残す感じです。

Cコッキング前期、テイクバック

 腕は背中側に大きく引いてはいません。また肘も高く上げていません。両肩を結ぶ線よりも下の位置にあります。肩、肘に大きな負荷はかかっていません。

Dコッキング後期

 前腕を垂直に立てています。

Eコッキング後期

 前足が着地。ストライドはあまり大きくはなく、両足が地面から離れない程度の大きさです。グラブは脇に抱え込みます。

F加速期

 加速期は腕が前に進む速度が急速に速くなる時期です。
 軸足を思い切り蹴り右腕の前腕は水平に倒します。

G、H加速期

 肘が伸びて行きます。上体は前に少し倒れて行きます。

I加速期

 ボールのリリースポイント。腕は地面と水平の高さで、サイドハンドスローと同じ高さです。

J減速期

 前脚はホームプレートからセンター方向を見れば、垂直になっています。体の重心は前足と軸足を結ぶ線の上にあり、投球の基本が守られています。

Kフォロースルー

 上体は前に倒れ肩の縦回転も大きくなります。肩は水平方向にもよく回転し、上体は1塁側に向いています。フォロースルーも十分にとっています。肩、肘を急速に減速させると負荷がかかるので、フォロースルーを大きくとることは大事です。

 まとめ

 テイクバックで腕、肘を高く、あるいは背中側に大きく引いておらず、前足を踏み出す時、骨盤を回転させながら行っているので、腕、肘が遅れて出てくることもなく、肩、肘に負荷のかからない投球フォームと言えます。
 F、G、H、I加速期の両肩と右肘の位置を見ると、右肘は両肩を結んだ線上にあり、これは肩に大きな負荷がかかっていない証拠です。肩の水平内転がされておらず、肩にトルク(回転させる力、力のモーメント)がかかっていないことを意味します。ボールのリリースの瞬間にだけ、積極的に肩にトルクをかけています。
posted by BEST PITCHING at 02:41 | Comment(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月18日

理想的な投球フォーム

 理想的な投球フォームの条件を4つ挙げてみましょう。

@球が速い
A制球が良い
B肘、肩への負担が少なく怪我をしないで長い年月(20年以上)投げれる
C投球動作の始動からボールが手から離れるまでの時間が短い


Cを加えたのは球が時速140キロ代の前半の速球でも、投球動作が速いと打者がタイミングを取りづらく、空振りすることが多いからです。具体例は大リーグでは上原投手、日本のプロ野球ではソフトバンクの摂津投手です。大リーグでは球が速いだけでは通用しないようです。いかにタイミングを外すかが必要なようです。また、制球が良いことも大事ですが、コースを狙うよりもタイミングを外す方が効果はありそうです。大リーグの打者はパワーがあるのでタイミングさえ合えばボール球でもホームランを打つからです。

 大リーグで@、A、Bを満たしている投手を一人挙げるとすると、1910−1920年代に活躍した右のサイドハンド投手ウォルター・ジョンソンがその代表です。

 ジョンソンの成績はすばらしく、通算勝利数はサイ・ヤングの通算511勝に次ぐ、417勝で大リーグ歴代2位です。防御率は2.17でサイ・ヤングの2.63を上回っています。通算完封数は歴代1位の110でこれを破る選手はもう出てこないでしょう。球速は90マイル代中から後半だったそうです。通算三振数は3508で、これを最初に破ったのは現テキサス・レンジャース社長のノーラン・ライアンです。
制球も良く、四球率2.1/9回でした。

Bの肘、肩への負担が少ない理由

 野球でオーバーヘッド動作という表現があります。これは腕を頭よりも高く上げる動作をすることで、この動作は野球に限らず、バレーボール、その他のスポーツでも同様に肩に無理がかかる動作です。
 そういう理由で、オーバーハンドスローは怪我をしやすいと言えます。

 ソフトボールの投手が怪我をしないのは重力を利用しているから

 ソフトボールではボーリングの投球同様に重力で腕が自然に落下しスウィングするのを利用できるので、肩に負担がかかりません。また、肘は伸ばしたままなので肘の故障もないようです。
 したがって、ソフトボールの投球フォームは怪我をしにくいと言えます。野球のサイドハンドスローも同様です。四つ足動物の前脚の向きは体軸に対して直角なので、サイドハンドスローの腕の向きと同様なので、サイドハンドの投げ方も腕に無理がかからないのでしょう。また、サイドハンドスローの投球では肘をほとんど曲げないので肘は故障しにくいと思われます。また、野球のアンダーハンドスローも同様に故障しにくいと言えます。

 野球のオーバーハンドスローではテイクバックで腕、肘を高く上げる動作が必要ですが、これが肩には大きな負担になります。腕の重さは腕の太さが人によって違いますので、差がありますが、体重の9%位あるそうです。体重70キロでは6キロ近くもあります。ボーリングの13ポンドのボールが5.9キロですから、オーバーハンドスローはいかに肩に負荷のかかる投げ方かがわかります

 野球のオーバーハンドスローは重力に逆らった投げ方なので、肘が一番高く上がるまでは重力に逆らうので、腕のスウィング速度を加速するのもたいへんです。

 腕を加速時にはもっと大きな負荷がかかります。

 ニュートンの慣性の法則により、慣性抵抗が生じます。

 慣性抵抗は質量×加速度ですので、腕を急加速すると肩は大きな負荷(トルク)がかかります。トルクは回転させる力で、てこの原理でいうところの力×距離で表わせます。
 オーバーハンドでテイクバックからの投げ始めにいきなり腕を急に回転させてはいけない理由がここにあります。また、トルクは距離に比例するので、投げ始めに腕が体から離れていると肩に大きなトルクがかかります。前足を着くまで腕を振ってはいけないといわれるのはこのためです。前足を着いて、体の各部分を回転さないと肩には大きな負荷がかかります。

 サイドハンドスローが怪我をしにくい理由

@腕を肩よりも上に上げないので上への負荷が少ない

Aテイクバック時、腕を体の後ろへ大きく引くことができる
 腕が下がった状態では、ボーリング、ソフトボールの投球で分るように腕を後ろへ大きく引くことができます。直立して腕を下げた状態から腕をできるだけ後ろへ引き、肘をのばしたまま腕を肩の真上まで上げてゆくと、肩が痛くなり、腕を上に上げるほど腕は前に出てゆきます。したがって、オーバーハンドスローでは肘を曲げ、体を横に向け手の位置をホームプレートから遠ざかるようにテイクバックしなければ投球ができません。

 ウォルター・ジョンソンの投球フォームは、ボーリングのテイクバックを上体を前傾にして横に捻りながら行います。少し高く上げた腕を重力を利用しながら少し下げながら、体を回転させそのまま遠心力を利用して横に振り出す感じです。肘はわずかに曲げて水平よりも少し下がり気味で少しアンダーハンドスロー気味です。重力と遠心力を利用して投げているので腕が勝手に回っていく感じで、オーバーハンドスローとは比べようもないぐらい非常に楽な投げ方です。
 
ウォルター・ジョンソンの投球フォーム
walter johnson warm up.gif

野球肩、野球肘

 野球の投手は肩、肘の怪我、故障をする危険性が高いのですが、投球フォーム別にみると、上から投げ下ろすオーバーハンドスローが最も故障をしやすいようです。野球に限らず、腕を肩より高く上げてスウィングする(オーバーヘッドスローイング)スポーツ、バレーボールのアタック、テニスのサーブ、バドミントン、水泳(バタフライ、クロール)などでも同様の故障をする可能性があります。

 いずれにしても、オーバーヘッドスローイングをしなければ良いということです。バレーボールのアタックではボールがネットを越すためには腕を高く上げざるを得ません。野球の場合、アンダースロー、サイドスローも可能なので幸いです。オーバースローでも腕の角度を上体の軸と90度にして、上体の軸を垂直から傾ければ腕の角度は水平より上がり、スリークォーターで投げることは可能です。

肘、肩を故障しやすいオーバーヘッドスローイングとは?
オーバーヘッドスローイング.gif

 サイドハンドスローは一般的に肩、肘に負担がかかりにくいと思いますが、肘を曲げた投げ方をすると、やはり故障につながります。
 
 肘を先行させ前腕が遅れて出てくるレイバックの姿勢を取る投手は肘の内側側副靭帯に引っ張応力がかかり、トミー・ジョン手術(内側側副靭帯再建術)が必要になる可能性があります。

 トミー・ジョン手術を受けたサイドハンド投手

元ヤクルトのイム・チャンヨン投手、最速160キロを記録した。2012年7月に手術を受けました。現在はシカゴ・カブスとマイナー契約しており、リハビリ中です。
lim chang yong lay back.jpg
lim chang yong 2011.gif
lim chang yong.gif

ヤクルトの館山昌平投手、最速153キロを投げる。2012年4月12日に2度目のトミー・ジョン手術を受けました。
tateyama shouhei s1.gif

 日本のプロ野球のサイドハンド投手で大きな怪我もなく活躍した選手は肘を大きく曲げた投げ方をしていません。

斎藤雅樹投手(元巨人)、通算18年で180勝96敗、防御率2.77
1990年(2年連続で20勝達成)の映像
saitou masaki1990 7consecutive complete..gif
saitou masaki1990 7consecutive completes1.gif

鹿取義隆投手(元巨人、西武)、通算19年で91勝46敗、131セーブ、防御率2.76
katori yoshitaka 1992 145km.gif
katori yoshitaka 1992 145kms1.gif

高津臣吾投手、(元ヤクルト、大リーグではシカゴ・ホワイトソックスとニューヨーク・メッツ計2年、韓国、台湾プロ野球に各1年)
ヤクルトでの通算15年で、36勝、46敗、286セーブ、防御率3.20。大リーグ通算2年で8勝6敗27セーブ、8ホールド、防御率3.38。
ホワイトソックスでの投球、球速は86マイル、時速138キロ
takatsu shingo CHS.gif
takatsu shingo CHSs1.gif

潮崎哲也投手、(元西武)、通算15年で82勝、55敗、55セーブ、防御率3.16。50センチも沈むシンカーが有名で、最速150キロを記録した。
shiozaki tetsuya 150km.gif
shiozaki tetsuya 150kms1.gif
shiozaki tetsuya 149km slow.gif



 大リーグで300勝以上挙げた投手は、大きな故障をせずに20年以上良い成績を残せた投手なので、どういうフォームで投げたのか非常に興味があります。
 
@ロジャー・クレメンス
 通算24年で354勝184敗、防御率3.12、奪三振率8.6/9回、四球率2.9/9回

クレメンスが20三振を記録した時の投球(15三振目)
clemens20.gif
clemens20s1.gif

 オーバーヘッドスローイングになっていません。腕の角度は上体の軸とだいたい90度となっています。テイクバックで肘をあまり高く上げていません。テイクバックで肘が上がりすぎると、肩も上がりすぎて、肘を大きく曲げたフォームになってしまいます。また、テイクバックからすぐに力を入れて腕を振っていません。前足が着地してから腕の振りが速くなっています。
 フォロースルー(ボールが手から離れて以降のフォーム)も大きく取っています。投球動作はボールが手から離れてから、大きく取り、ゆっくり減速しないと肘、肩に衝撃がきて故障につながります。
 体の重心の位置も両足を結んだ直線上にあり、クレメンスは故障しにくい投球フォームをしていると言えます。




 
 
 
posted by BEST PITCHING at 21:06 | Comment(13) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月02日

怪我をしない理想の投球フォーム

 怪我をしないための投球フォームについて考えてみたいと思います。

 まず、怪我をして手術の経験のある投手の投球フォームを見てみましょう。

@松坂投手
 2011年6月、右肘の故障でトミー・ジョン手術を受けました。
※トミー・ジョン手術(英: Tommy John Surgery, 側副靱帯再建手術)は肘の靱帯断裂に対する手術術式。断裂した肘の靭帯を切除して他の部分(グラブを持つ側の手首の所の靭帯が多いようです)の正常な靭帯を移植する手術。
 1974年に最初にこの手術を受けたトミー・ジョン投手にちなんで命名されています。
 トミー・ジョンは通算288勝し、手術後も164勝を挙げ、46歳まで現役だったそうです。

投球では側副靱帯の内、尺側側副靱帯(別名、内側側副靱帯)が損傷しやすい。
投球時、尺側側副靱帯は伸び、力がかかり、悪いフォーム、変化球の投げすぎ、で損傷しやすい。
ulnar collateral ligament.jpg


松坂投手の大リーグデビュー戦(ロイヤルズ戦)の投球フォーム、95マイル
matsuzaka mlb deview.gif
matsuzaka mlb deview slow1.gif

 まず、気づく点を挙げてみましょう。
●軸足(右足)の蹴りが弱い点です。蹴った後、右足が引きづられるような投げ方です。

●投球が終るまで背番号が良く見える点です。腰が1塁方向に回転していきません。上体を前に倒す、つまり右肩の縦回転だけで投げています。結局、下半身を利用した投げ方ではなく、肩、肘に負荷のかかる投げ方をしていると言えます。
 肩、肘への負担を減らすには右肩の横回転を増やす必要があります。そのためには、打者から背中がよく見えるまでもっと上体を捻ることが必要です。

 

A五十嵐亮太投手
2006年27歳、右肘靭帯断裂で、トミー・ジョン手術を受ける。2007年は登板なし。
五十嵐亮太投手、2004年25歳、ヤクルト時代に3球連続158キロを記録、その3球目
igarashi 158 3renzoku..gif
igarashi 158 3renzokuslow1.gif
 五十嵐亮太投手も松坂投手に似た投げ方で、背番号がずっと見えており、上体を前に倒す、つまり右肩の縦回転だけで投げています。

 松坂投手、五十嵐投手に共通(日本のプロ野球投手の多くに見られる)なのが、投球後半に前脚の軸が垂直ではなく、3塁側に大きく傾いて腰のあたりが大きく3塁側に流れる点です。
 また、両投手とも前足が着地する前に右腕がすでに振り出されています。理想は前足が着地するか、その寸前まで右腕は振り出さないことです。
 松坂投手、五十嵐投手とも、右腕の振り始めが早すぎるためか、あるいは体が早くからホームプレート方向を向くためか、前足の着地位置がホームプレート方向から一塁側にずれて着地しています。そのために前脚の軸が3塁側に傾いています。

Bステファン・ストラスバーグ(ワシントン・ナショナルズ)
 MLBドラフト史上で『最高の選手』」と話題になり、ワシントン・ナショナルズに入団。2010年6月8日、大リーグデビュー。デビュー戦で14三振を奪って初勝利。 速球(フォーシーム)の平均球速は97.5マイル(時速157キロ)であった。
 しかし、8月には右肘を痛め、すぐにトミー・ジョン手術を受けました。
 復帰は2011年9月。2012年は15勝6敗、防御率3.16の好成績を残しましたが、肘への負担を考慮して160イニング制限がかかり、この年は159.1/3イニングで終了。ポストシーズンで登板できませんでした。

ストラスバーグの投球フォーム
strasburg2012.gif
strasburg2012slow1.gif
ストラスバーグの投球フォーム(横からの映像)
strasuburg side view.gif
strasuburg side view slow1.gif
肘が90度曲がり、前腕が遅れて出てくる(レイバック)Bコマ目
strasuburg side view lay-back4 framesのコピー.jpg
肘が90度曲がったフォームは最も肘の内側の内側側副靭帯に無理な力(引っ張り応力)がかかると言われています。ストラスバーグは上体が正面を向いたまま、肘を中心に前腕の回転を急に加速しています。急加速が内側側副靭帯に無理な力をかけています。このとき、肩関節を素早く内旋しており、肩へのストレスも大きくなっていると思われます。

ストラスバーグのテイクバックは小さく、投球モーションは速く、しかも球速が90マイルの後半が出て、非常に打ちづらい投手です。制球も悪くはなく、四球率/9回は2012年度が2.7、通算が2.4で、三振奪取率/9回は2012年度が11.2で大リーグの先発投手ではタイガースのシェルザーの11.08を抜いてトップ(規定投球回数には達せず)です。問題は肘、肩に負担のかかる投球フォームをしていることだけです。
 松坂、五十嵐投手と同じく、股関節、膝関節の内旋少ないためか(結果として打者に背中が十分に向けていない)前足が着地する前から右腕が前に振り出されていて、下半身を有効に利用できておらず、肩、肘を中心に投げています。体が正面を向いた時点でもまだ肘が曲がっいます。肘への負担が非常に大きい投げ方をしています。

 怪我をしない投球方法

 投手の怪我は肩、肘が多く、肩、肘に負担をかけない投げ方をすることが大事です。そのためには、肩、肘よりも強度のある下半身を十分に使う必要があります。
 
 その具体的な方法

 @投球動作の最初の段階であるワインドアップの時、両股関節を内旋、両膝関節も内旋(膝を絞る)し、内股の姿勢を作る。結果として、打者に背中が十分に向く。内股から蟹股の姿勢になるように股関節を開き、外旋させながら、膝が前に向いた段階で軸足(後ろ足)を強く蹴る。

 具体例@:上原投手、足の向きを前に素早く向けて爪先で強く蹴るのがポイント、上原投手は最初から膝の向きを少し前に向けているように見えます。
uehara hatsu save ashi slow1.gif

 具体例A:サンフランシスコ・ジャイアンツのティム・リンスカム、ストライドの大きさは身長の128%で大リーグでトップクラス、大リーグでトップかもしれません。アロルディス・チャップマンが120%と言われています。この大きなストライドを生み出しているのがワインドアップ時のフォームです。
lincecum2012足内旋.jpg

 具体例B:シンシナティ・レッズのアロルディス・チャップマン、大リーグ最速記録105マイル、時速169キロを可能にしているのはこのワインドアップ時のフォームのおかげです。膝の絞り(内旋、両脚がX字のようになる)で下半身の筋肉の緊張を高め、瞬発的な軸足の蹴り出しを行っています。
chapman rennsyu 内旋から外旋のコピー.jpg


 強く蹴るほど、体が前に移動し(直線運動)運動エネルギーが得られます。後はこのエネルギーをいかに(投球メカニクスにより)ボールのエネルギーへと変換するかです。そのためには全ての球技に共通な速いスウィングの動き(回転運動)に変換するかです。

 具体的には、いかに体が前に動く直線運動を、ボールを投げる側の肩の速い縦回転、横回転に変換するかです。選手により、縦回転が主体の投手(ノーラン・ライアン、ジャイアンツのティム・リンスカム、野茂英雄)もいれば、横回転が主体の投手(ランディ・ジョンソン、ウォルター・ジョンソン、ブレーブスのクレイグ・キンブレル、現在の上原投手)、その中間(多くの投手がこれに相当)と大リーグの投手は個性的で千差万別です。

 時代の流れとしては、オーソドックスな縦回転主体から、大リーグでは横回転を多く取り入れた投球フォームが主流になっています。その点日本のプロ野球の投球フォームは時代遅れの感じがします。球速で言えば10キロ弱、損をしているみたいです。日本人大リーガーで成功した人はみんな横回転を取り入れたフォームに修正しています。スキージャンプで言えばV字ジャンプに転向している感じといえます。

 縦回転主体では、頭が上下に動いて制球が悪くなるからです。横回転主体では今度は、頭が一塁側に動きますが、こちらの方が制球への悪影響は少ないようです。

肩の縦回転
投球縦回転.gif

肩の横回転
投球横回転2.gif

肩の縦回転が主体
具体例:ティム・リンスカム
lincecum2012slow1.gif

肩の横回転が主体
具体例:上原投手、ウォルター・ジョンソン、サイ・ヤング

上原投手
uehara20121005playoff.gif

ウォルター・ジョンソン、1907年から1927年まで活躍した剛速球投手。21年間で通算417勝279敗、生涯防御率2.17、3508奪三振、110完封
肘をほとんど曲げないので肘の故障とは無縁の投球フォームです。現役中も故障は無かったようです。
walter johnson.gif

サイ・ヤング、1890年から1911年まで活躍した投手で、22年間で511勝316敗、生涯防御率2.63、2803奪三振、1955年死去後の翌年1956年に彼に因んでシーズンの最優秀投手に送られるサイ・ヤング賞が制定された。
動画はないが、下の静止画はサイドスローです。サイ・ヤングはサイド、スリークウォーター、オーバーハンドと投げ分けたようです。サイ・ヤングも故障をしたことがないらしい。
275px-Cy_young_pitching.jpg

Aテイクバックで勢いよく腕を2塁方向に引くと肩、肘にストレスがかかるので、積極的に速く動かさないで脇を締めて、背中側に引く程度にする。

 リンスカム、チャップマンの投球フォームを見ると、2人とも肘は体から離さないで、脇を締めた状態で背中側に引いています。2人とも軸足を強く蹴りながら上体もホームプレートに向けて回転させています。投球側の肩は円軌道を描くので、腕はこの円軌道の接線方向にあると引っ張りにより腕は動き、肩は何も仕事をせずに(トルク、回転力が必要ない)済みます。
 後は遠心力で腕は振り出されるので、肩に無理なストレスはかかりません。肘は肩が描く軌道で定まる平面内に自然と向かいます。肘も自然と前に動いて行くので、腕、肘を意識的に振る必要もなくなります。
 腕、肘はボールを狙った所に行くように微調整するために動かす程度ですみます。
 これは、速い球を肩、肘へのストレスをかけずに投げるための効率の良い方法です。

リンスカムはテイクバックが小さい
lincecum side slow 4 framesのコピー.jpg
lincecum side slow.gif

チャップマンもテイクバックは背中側に引く程度である
chapman106_take back.jpg

B前脚は軽く曲げて着地し、直ぐに強く蹴って伸ばす
 前脚で下半身の動きを完全に止める、つまり腰のあたり(体の重心)を一旦完全に止める必要があります。

 具体例:ジャスティン・バーランダー
verlander bad front leg.gif

C前脚は垂直かやや1塁側(右腕)に傾ける。

 前脚の軸上に体の重心が来るような姿勢になります。回転軸上に重心がくるときが回転速度が最大になるからです。

 傾きが大きいほど上体は一塁側に回転しやすくなり、右肩の横回転が速くなる。
 具体例:デトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダー、アロルディス・チャップマン(左腕)、黒田投手

ジャスティン・バーランダーの前脚は1塁側に傾く

verlander front leg .jpg

アロルディス・チャップマンの前脚は3塁側に傾く
chapman106glove.jpg

黒田投手の前脚は1塁側に傾く(2012年になってその傾向が強い)
kuroda front leg .jpg

 垂直な場合は頭が左右に大きく動かないので制球は良くなります。
 具体例:ヤンキースのマリアーノ・リベラ、ジャイアンツのマット・ケイン、上原投手

マリアーノ・リベラの前脚は垂直
mariano rivera front leg .jpg

マット・ケインの前脚は垂直
matt cain front leg.jpg

上原投手の前脚は垂直(最近は1塁側に傾くこともある)
uehara20121001trout.jpg


D前足を着地するまで、意識的に腕を振り出し始めてはいけない。

具体例:アロルディス・チャップマン(106マイル、時速171キロ、球場のレーダーガンの数値)
chapman106_23.jpg
chapman106slow1.gif
チャップマン投手は着地直前に、肘から手にかけての部分(前腕)を起こして手の位置を高くしていますが、肘から肩にかけては動いていません。

 そのためには、右投手の場合、グラブを持っている腕、肩を3塁方向に突き出すようにするとともに(結果として背中がホームプレート方向に向く)、前足の向きを着地直前まで3塁方向に向けておく。

 具体例:ヤンキースの大リーグ史上最高のクローザーと言われているマリアーノ・リベラ
mariano rivera 2011slow1.gif


 以上、怪我をしないための具体的な方法を挙げましたが、これは同時にいかに速い球を投げるか、いかに制球を良くするかという、方法でもあります。
 投球というといかに腕を強く振るかというイメージがありますが、下半身をいかに有効に利用して、いかにして腕を強く振らないで済ますかということが大事です。

 投球は軸足(後ろ足)を蹴って、前足を着地した時点で、その出来不出来が決まると言っても過言ではありません。それまで腕を振りに行ってはいけないのです。上にあげた5つのポイントが守られていれば、肩が、前脚の軸上の腰のあたりを中心として、速い円軌道を描くのでボールを投げる側の腕には遠心力が働き、楽に腕は振り出されます。
 

 


posted by BEST PITCHING at 12:48 | Comment(10) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする