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2013年07月15日

岩隈投手8勝目、エンゼルス戦5勝0敗

岩隈投手8勝目

4:10 PM ET, July 14, 2013
Safeco Field, Seattle, Washington

Angels 3     Mariners 4
123456789RHE
LAA000012000380
SEA02011000-470



W: H. Iwakuma (8-4)
L: J. Blanton (2-12)
S: T. Wilhelmsen (19)

 ここ最近勝ちに見放されていた岩隈投手が過去負けなしの4連勝と相性の良いロサンゼルス・エンゼルス相手に7回を3失点に抑え、8勝目を挙げました。オールスターゲーム前の最後の試合に登板したので、オールスターゲームに出場の決まっている岩隈投手は観戦するだけで登板はないようです。

 岩隈投手の投球内容は7回を、
7安打、3失点、3自責点、1四球、7三振、1本塁打。投球数は96/ストライク68。防御率3.02。


Iwakuma holds off Halos to complete sweep
岩隈はエンゼルスに競り勝ち、シリーズ3連勝を達成

Right-hander to play spectator at ASG following seven-inning outing
右腕は7回を投げたのでオールスターゲームでは観戦の予定です
By Jacob Thorpe / MLB.com | 7/14/2013 8:35 PM ET

SEATTLE -- Hisashi Iwakuma got back on track with a good start against the Angels, going seven innings as the Mariners beat Los Angeles, 4-3, to earn their first sweep of the season in front of 25,629 at Safeco Field.
シアトル -- 岩隈久志はエンゼルス戦で7回を投げ好投し復調しました。そしてマリナーズはセイフコ・フィールドの25,629 人の観客の前でシーズン最初のシリーズ全勝を達成し、4対3でエンゼルスを破りました。

Iwakuma had his best start since mid-June as he improved to 5-0 against Los Angeles. Entering Sunday's game, the Japanese righty had given up at least four earned runs in his previous five outings.
岩隈は6月中旬以来最高の投球を見せ、ロサンゼルス(エンゼルス)との対戦成績は5勝0敗とまた良くなりました。日曜の試合前までに日本の右腕は直近の5度の登板で4点以上の自責点を許していました。

Even with his recent struggles, Iwakuma has been a revelation for Seattle, going 8-4 with a 0.94 WHIP and a 3.02 ERA in the first half of the season.
最近の苦戦があったにせよ、岩隈はシーズンの前半で8勝4敗、WHIP0.94、防御率3.02を残しており、シアトルにとっては驚きの的です。

"I tell you this, I voted for him for the All-Star Game," Angels second baseman Howie Kendrick said. "That says a lot about the guy. He competes every time out there and competes against us every time. He has pitched well against the league, too. Congratulations to him for the All-Star Game."
「言っておきたいことがあるんです。僕はオールスターゲームに彼を投票したんです」エンゼルスの2塁手のホウィー・ケンドリックは言いました。「その数字がこの選手の凄さを物語っています。彼はいつも競うように登板してきます。われわれと対戦するときにはいつもそうなんです。彼はリーグのその他のチームと対戦するときにも良い投球をしてきました。彼がオールスターゲームに選ばれたことを祝福したいと思います」

Because of the length of his start on Sunday, the first-time All-Star will not actually pitch in the 2013 MLB All-Star Game on Tuesday. Greg Holland of the Royals will take his place. Still, the second-year player is looking forward to the experience.
日曜日に先発して長いイニング投げたので、彼にとっては最初のオールスターゲームになりますが、彼は実際のところ火曜日のオールスターゲームでの登板はないでしょう。それでも、この2年目の選手はオールスターゲームの経験を楽しみにしています。


Iwakuma's solid outing
岩隈の安定した登板(動画)

posted by BEST PITCHING at 19:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

上原投手の投球分析

上原投手は2013年7月12日のアスレチクス戦で9回に3者三振を奪い、今シーズン8セーブ目を挙げました。
 上原投手の今シーズンの投球フォームで昨年までと変わった点は、前足を着地してから膝が伸びたときに前脚の軸が垂直よりも一塁側にいつも傾いていることです。昨年までもそいうい傾向はあったのですが、今年はすべての投球でそうなっており、また軸の傾きも昨年よりも大きくなっています。

 上原投手の投球フォームは、巨人時代から大リーグに移籍して変化しましたが、大リーグに移籍してからも徐々に変化しています。これについては一度触れたことがありますが、今回は重力を利用した投球フォームという視点で分析したいと思います。
 
 今回取り上げた投球フォームは、アスレチクス戦で8セーブ目を挙げたときのものです。2番目の打者7番ジョシュ・レディックJosh Reddickを90マイルの外角低めのフォーシームで見逃し三振に打ち取ったときの投球フォームです。

 上原投手の投球フォームの特徴

@ワインドアップで、最初、体の向きは3塁側よりも少し前を向いてる。
koji uehara wind up.jpg

 右足の爪先の向きが投球プレートに平行と言うよりも少しホームプレート方向を向いている。クイックでボールを投げるのに適しています。

Aテイクバックが小さく、肘は両肩を結ぶ線よりもかなり低めで、肘を背中側に引かない。
koji uehara back foot drive..jpg
 そのため腕が体に隠れて突然ボールがリリースされるので、思ったよりも早くボールが来て、打者は打つタイミングが遅れ振り遅れてしまう。球速は89から90マイル、時速143から145キロ程度しかありませんが、相手の打者はファウルか空振りをしてボールを捕らえるのは非常に困難です。
 特に今シーズンは左打者に対してはほとんど打たれていません。

今シーズン前半7月14日現在(オールスターゲーム前)の成績は、
2勝0敗、防御率1.70、被打率.160、WHIP0.76です。

右打者、左打者ごとの成績は
左打者:防御率1.11、被打率.110、WHIP0.62
右打者:防御率2.50、被打率.221、WHIP0.94

 また、右肩にも無理な力がかかっていません。

B前脚を高く上げ、下ろすことで位置エネルギーを回転エネルギー(骨盤の回転と上体の前への回転)に変えている。
koji uehara wind up front leg up.jpg
 前脚の膝を胸に着くぐらい高く上げ、曲げた左膝を伸ばしながら、重力を利用してホームプレート方向に振り下ろすことで、骨盤がゆっくりと横に回転してゆき肩の横回転が発生し、上体は2塁方向に少し倒れた状態から垂直に起き、肩の縦回転が発生します。肩の縦回転により腕をスムースに上に引き上げることが可能となり、肩に無理な力がかかりにくくなります。

  そのため、流れるようなスムースな投球フォームになっています。

 一方、骨盤を回転させないように前側の股関節でリード(タメを作る)する方法は、重力をうまく利用できず、上体が後傾した状態で腕を担ぎ上げるようになるので、肩にも肘にも負担がかかる投げ方だと言えます。

 大リーグで300勝以上挙げた大投手はみんな上手に重力を利用して、効率よく投球を行うことで、怪我なく長く活躍できたのでしょう。昔のハイキック投法は重力を有効に利用した投法であり、肘、肩に怪我をしにくいと言えます。ただ、クイックな投球ができないだけであり、現在でも投球の基本となる投げ方であり、良い所を十分に活用することが非常に大事だと思います。

 重力を利用しつつ、軸足側の股関節から下の関節を有効に利用して軸足の蹴り出しを強くすることが現在、大リーグで活躍している投手の特徴だと言えます。

 投球とは結局、肩の縦回転、横回転の速さをいかに効率よく高めるかにあります。回転運動を考える場合には慣性(慣性は惰性の元であり、質量の元です)、トルク(回転力、力のモーメント)、慣性モーメント(回転のしにくさを表す)の概念が大事になってきます。
 怪我をしないで効率よく投げるには、重力に逆らわないで、重力をトルクとして利用する。
 急加速、急ブレーキは避ける。
 慣性モーメントをできるだけ小さくするよう、体の重心の位置に気をつける。つまり、前脚の軸が地面に垂直から、一塁方向に傾く(腕を横に広げ高速で回転して発生する遠心力に対抗するため)。上原投手のように骨盤の回転が速い投手ほど軸の傾きは大きくなります。肩の縦回転が優位な投手は軸の傾きはなくなり、ほぼ地面に垂直となります。

C軸足側の膝の向きが素早くホームプレート方向側に向くので、軸足を強く蹴れる。
koji uehara right knee direction.jpg
 そのため骨盤の回転が速い。

D前足を着地した後、曲がった左膝をおもいきり伸ばしている。
front leg stretch.jpg
 左の股関節が前に移動するのを完全に止め、骨盤の回転を加速している。また、上体が前に倒れる回転も加速させている。つまり、右肩の横回転、縦回転とも加速させているので、右肩の回転方向は時計でいうと2時から8時方向になっている。腕の角度も遠心力で自然とそうなっている。右肩が移動する軌跡を含む平面内(下りの斜面)を右腕は移動し、上体が前傾することで重力の作用で落下するように斜面を回転しながら落下してゆく。

2013年7月12日のアスレチクス戦、打者はジョシュ・レディックJosh Reddick
koji uehara save8 rear view.gif
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横からの映像
koji uehara 2013save8.gif
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koji uehara 2013save8  6frames.jpg


重力の利用を中心に考えた投球段階の分類

@前脚を上げる
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 前脚を高く上げることで脚に位置エネルギーが蓄えられます。

A前脚をホームプレート方向に振り下ろす
koji uehara save8 rear view front leg down slow.gif
 前脚をホームプレート方向に振り下ろすことで、脚に蓄えられた位置エネルギーを運動エネルギーに変えます。
 位置エネルギーには骨盤を回転させる横方向の回転エネルギーと上体をホームプレート方向に倒す縦方向の運動エネルギーがあります。

B軸足の蹴り出し
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 右の股関節が曲がっていて、右の脛が前傾して、膝の皿がホームプレート方向に45度ぐらい回転していることが強い蹴り出しには必要。

Cフォロースルー
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 フォロースルーは大きくしなければいけません。
 運動エネルギーを得た腕をスムースに減速することは怪我を防ぐ上で非常に大事です。急激に腕の動きを止めると肩に無理な力がかかってしまいます。
posted by BEST PITCHING at 13:49 | Comment(1) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月22日

怪我をしやすい投球フォーム

 怪我をしないために守るべきポイント

前足着地時の正しいコッキングの位置

 オーバーハンド、スリークォーターの場合
 投球動作(コッキングの段階)で前足を着地したとき、投球側の前腕が垂直に立っていて、上体は開いていない(両肩を結ぶ線がホームプレートの方向を向いている)、投球側の肘の高さは両肩を結んだ線よりも高くならない。

 これは、怪我をせずに長い間活躍している選手の特徴です。

 では、このような投球フォームをしている選手を見てみましょう。

ニューヨーク・ヤンキースのマリアーノ・リベラMariano Rivera(43歳)
身長  6' 2" =約188 cm
体重 195 lb =約88.5 kg
通算629セーブ(大リーグ記録)、奪三振率8.3/9回、四球率2.0/9回
前足着地時のコッキングの位置
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フィラデルフィア・フィリーズのクリフ・リーCliff Lee(34歳)
身長 6' 3" =約190.5 cm
体重 205 lb =約93 kg
通算132勝80敗、奪三振率7.5/9回、四球率2.0/9回
肩、肘に大きな怪我はしたことがない。2008年アメリカンリーグのサイヤング賞受賞
前足着地時のコッキングの位置
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トロント・ブルージェイズのマーク・バーリーMark Buehrle(34歳)
身長 6' 2" =約188 cm
体重 230 lb =約104.3 kg
通算176勝136敗、奪三振率5.1/9回、四球率2.0/9回
球速は遅く速球で89マイルしかないが、制球が良く、怪我にも強く、2012年までに12年連続で2桁勝利、12年連続で200イニング以上投球している。
2007年ノーヒット・ノーラン達成。2009年完全試合達成。
前足着地時のコッキングの位置
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 3人に共通なのはテイクバックで肘を両肩を結ぶ線よりも高く上げず、かつ背中側に大きく引かないで、一度肘を伸ばすようにして素直に前腕を垂直に立てている点です。
 そのため肩、肘に大きなストレスがかかっていません。

怪我をしない投球フォームはコントロールも良い

 3人ともコントロールが良く、偶然にも3人の四球率/9回は2.0と低く、まったく同じだというのは注目に値します。

怪我をしないテイクバックの形

肘は一度まっすぐ伸ばすか、軽く曲げる程度にして、それから前腕を立てる(コッキングのトップ)
昔の投手はこの形が多かったように思います。大リーグでは現在でもこの形の投手は多くいます。日本では少なくなったようです。この形は物理的にも人体の解剖学的にも球速は出るし、怪我も少ないと思います。

マリアーノ・リベラのテイクバック
mariano rivera take back.jpg
クリフ・リーのテイクバック
cliff lee rear take back.jpg

3人のコッキングのトップ(前腕を垂直に立てた状態)での肘の位置
 両肩を結んだ線よりも低い位置にあります。

大リーグ300勝投手のトップの肘の高さ
300wins pitcher cocking top.jpg
 大リーグで怪我もなく長く投げて活躍した投手は同じくトップでの肘の位置は両肩を結んだ線よりも低くなっています。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソン、トム・シーバー、グレッグ・マダックスといった300勝以上を挙げた大投手はみんなそうです。
 みんな骨盤を回転させる投げ方をしているので、やがて肘の位置は遠心力で自然と両肩を結んだ線上に来て一直線に並ぶので問題はありません。

トップで肘の位置は高くしなければいけないという本当の意味

 これは紛らわしい表現で、上に上げた300勝投手たちと逆のことを言っています。すべての投球フォームでトップを高くすることは当てはまりません。逆に怪我につながる危険性があります。特に肘を高くして、背中側に大きく引いてしまうと肘、肩の怪我につながります。

 トップで肘の位置は高くしなければいけないという意味を自分なりに考えてみると、前腕を立てて肘を使い、上体の軸を傾けずに投げる場合にのみ当てはまる表現ではないかと思っています。ソフトバンクの摂津投手のような投げ方に言える表現だと思います。昔の投手では江川卓投手でしょうか。

ソフトバンク摂津投手のトップの肘の高さ
settsu tadashi top.jpg

 摂津投手はトップでの肘の位置が両肩よりも高くなっていますが、肘を背中側には大きく引いていません。
この投げ方で肘が下がってしまったら、下半身が使えず手投げになってしまいます。右投手の場合、肘を下げると重心の位置が3塁側にずれてしまい、前足を着地した際に左の股関節の位置が静止せず、体全体が3塁側に流れてしまい右肩の縦回転の速度も上がらず、肩、肘に大きな力を入れないと球速が上がらないためではないかと思っています。

怪我をしないために守るべきポイントが守られなくなる投球フォーム上の腕の形(テイクバックの形)

@inverted W(インバーティッド・ダブル、逆W)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Wをひっくり返した形になっている。
JohnSmoltz_2007 inverted w.jpg

inverted Wに関する記事はクリス・オリアリー氏のホームページChrisOLeary.comに詳しく解説が載っています。

THE INVERTED W DEFINED
Inverted W(逆W)の定義


I define the Inverted W as being more than 90 degrees of shoulder abduction with the Pitching Arm Side (PAS) elbow above the level of the shoulders (aka hyperabduction) combined with 5 or more degrees of shoulder horizontal adduction (PAS elbow behind the shoulders).
Inverted W(逆W)は肩が90度以上外転(腕を真下に下げた上体から腕を水平以上に上げること)して、投球側の腕の肘が肩の高さよりも高くなり(過外転とも言われる)、さらに肩は5度以上水平内転(投球側の腕の肘が肩よりも後にくること)すること

inverted Wはステファン・ストラスバーグ投手の投球イニング制限に関する話題ですっかり有名になったようです。最近ではセントルイス・カージナルスのアダム・ウェインライト投手が2009年、2010年にそれぞれ19勝、20勝を挙げたあと、2011年に肘の内側側副じん帯が断裂してトミー・ジョン手術を受けたこともinverted Wに関心が集まる理由です。アダム・ウェインライト投手は2013シーズン好調で9勝3敗(6月8日現在)の成績です。

inverted Wはピッチングコーチのポール・ナイマンPaul Nyman氏が大リーグに広めたようです。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソンを指導した投手コーチのトム・ハウス氏もinverted Wの普及にかかわったようです。南カリフォルニア大学でも最近まで指導していたそうです。

ステファン・ストラスバーグの投球フォーム
strasburg side  front.gif
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断裂が起こる肘の内側側副靱帯の場所(前束)、右肘を体の内から外に向かって見た図
elbow medial collateral ligament.jpg

inverted Wの問題点
 上のストラスバーグの連続写真に見られるように、前足を着地してから肘を急激に前に加速して押し出すので、前腕が急激に後に倒れる(lay back)。lay backの角度も大きくなり、肘の内側(小指側)の内側側副靭帯に急激に引っ張り応力がかかってしまう。繰り返し応力がかかることにより、靭帯の微小断裂が積み重なって行き、ある時点で靭帯断劽が起こり得ます。靭帯が断劽するときにはプチッという音(英語ではpop)が聞こえるそうです。

 上腕の動きを見ると、右肘を両肩を結んだ線よりも高く上げるので、このときに内旋が起き、続けて外旋(意識的に行なう能動的な動きと、慣性【前腕は同じ速度を維持しようとするが、肘は前腕よりも加速して前に進むため】による受動的な動きが重なる)が起き、lay back(前腕の遅れ)が最大になる。このとき、外旋も最大となる。これから、前腕は前に倒れて行く(内旋が始まる)。

 つまり、上腕には内旋、外旋、内旋という動きが順番に起きます。上腕の動き(回転角度の動く範囲)は大きくなるので、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れてしまいます。ストラスバーグ投手が前足を着地して、ボールを投げる側の前腕が垂直になった時の上体の向きをみると、ホームプレートの方向を向いています(体が開いてている、左肩の開きが早い)。また、内旋、外旋、内旋という動きが急速に行なわれるので(大きな加速度が生じる)、肩にも大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wの腕のフォームを作ってしまうと、下半身を使い、肩、肘に力を入れないで投げたとしても、大きなlay backが起こり、肩、肘には大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wは肩、肘の強度が、十分にあれば効率的な投げ方と言えます。内野手とか投球数が少ない場合には、クイックで投げれて有効ですが、投手の場合、球速も速く、球数も多いので長期的な健康を考えた場合には問題があると言えるでしょう。

 ストラスバーグ投手のように、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れる度合いが大きい投手ほど、肩、肘に故障が出てくる時期は早まります。
 

アダム・ウェインライトの投球フォーム
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トミージョン手術を受けることになった藤川球児投手のカブスでの投球フォーム
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元ヤクルトスワローズ伊藤 智仁投手、150キロを超える速球と高速スライダーで強い印象を残したが、肘、肩の故障に悩まされ若くして引退(31歳で)。3度肩の手術を受けた。肘痛、ルーズショルダー(非外傷性肩関節不安定症)に悩まされ、デビューした翌年から2年間は一軍での登板はなかった。
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Inverted W(逆W)のフォームを作ると、肩関節を覆う関節包という繊維状の軟部組織の下部に無理な引っ張り応力がかかり、肩関節が緩くなりやすいそうです。肩の脱臼と同じ部分が損傷を受けるそうです。伊藤投手は3度目の手術の後、投球中に亜脱臼を起こしています。33歳の誕生日の前日に引退を表明。

元中日ドラゴンズのストッパー、最速157キロを投げた与田剛投手、肩、肘の故障で活躍できたのは数年間であった。
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inverted Wのフォームのため下半身が有効に使えていません。コッキング動作で右前腕が垂直になったとき(トップの位置)で上体が完全にホームプレートの方向を向いていて、腕だけで投げているために、肩、肘に大きなストレスがかかっています。

日本ハム武田 久投手、2013年6月2日右肘痛のため登録抹消された。
テイクバックで右肘が両肩よりも高くなり過ぎており、肘を痛めやすい投球フォームです。
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西崎幸広投手、日本ハム、西武に在籍していた。デビューして3年間は46勝を挙げ華々しい活躍をしたが、その後は安定した活躍は出来なかった。15年間で通算127勝102敗、22セーブ、防御率3.25の成績を残しました。近鉄の阿波野投手と新人王を争い、僅差で賞を逃してしまいましたが、通算勝利数では50勝近く上回っています。
 投球フォームを見直してみると、Inverted W(逆W)のテイクバックをしており、これが肩、肘に悪影響を与えたのではないかと思われます。
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Ainverted L(インバーティッド・エル、逆L)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Lをひっくり返した形になっている。
inverted Lの定義:肘が両肩を結ぶ高さまで上がり、かつ肘が背中側に5度以上引かれている。
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2013年にトミー・ジョン手術を受けた吉見一起投手(中日ドラゴンズ)の投球フォーム
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テイクバックでinverted L(逆L)の形をつくると、inverted W(逆W)と同様、コッキング(前腕を立てる)動作のタイミングが遅れてしまい、肘、肩に大きなストレスがかかりやすくなります。
 前足を着地したときに、前腕がまだ垂直(地面に対して)になっておらず、前腕が垂直になったときには肩が開きすぎ、上体がホームプレートの方向を向いています(ストラスバーグ投手と同様)。

元中日ドラゴンズの左腕エース今中慎二投手、肩の故障のため30歳という若さで引退しています。
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ソフトバンク斉藤和巳投手、79勝23敗という脅威的な勝率を残している。右肩痛で3度の右肩腱板の手術をしている。まだ、現役は引退しておらず、コーチ契約中で、まだ現役へ復帰の可能性は0ではないようです。
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inverted L(逆L)のフォームをしている大リーグの現役200勝投手、ティム・ハドソン(37歳)
2013年6月14日現在、通算201勝110敗、通算防御率3.45、奪三振率6.06/9回、四球率2.70/9回
2008年8月にトミー・ジョン手術を受けました。
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Binverted V(インバーティッド・ブイ、逆V)

投球側の腕の形はinverted Wと同じだが、グラブ側の腕の肘は通常のフォームのように肩よりも高く上がっていません。

八木智哉投手、元日本ハム、現在オリックス・バファローズ在籍
日本ハム1年目は12勝を挙げ、パリーグ新人王に輝いたが、その後は肩痛に悩まされている。
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阿波野秀幸投手、近鉄、巨人に在籍していた。近鉄で15勝を挙げ、新人賞を獲得。3年間はすばらしい活躍をしたが、ピークはわずか3年であった。デビューして3年間で48勝を挙げたが、14年間で75勝68敗、防御率3.71の成績であった。八木智哉投手と同じくinverted Vのテイクバックをしており、コッキングのタイミングが極端に遅れる(肩が開く)のが長く活躍できなかった理由ではないかと思われます。骨盤も前足を着地する直前まで回転させないのも大きな原因です。
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まとめ

@テイクバックでinverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとると、内野手型、ショートアーム型の投球フォームとなる。

 肘関節を中心に前腕を高速で回転させる投げ方になり、肘に大きなストレスがかかって怪我をしやすくなります。また肩にも大きなストレスがかかります。

 肘を高速で回転させると、関節の軟骨も磨耗が激しく、肘を伸ばしたときに、関節内で骨と骨が急激に衝突するので、骨棘(骨の端がトゲのように出っ張ってくる)ができ、骨棘が欠けて分離したり(関節ネズミ)、骨折したりすることもよくあります。トミー・ジョン手術をする際は、同時に関節ネズミを取り出すこともよく行なわれます。

Ainverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとる投手には軸足を蹴り出すときに、前足を着地させる直前まで、骨盤を回転させずに投げる投手が多いので、このことがさらに怪我をしやすくしています。

B肩、肘は円を描くような動きが大事

テイクバックで肘は円を描くようにしなければいけません。

肩が円軌道を描くには、どうすればよいのか?

 円軌道を水平方向(横回転)と垂直方向(縦回転)に分けて考えます。

 水平方向の円軌道を描くには骨盤を軸足の蹴り初めから回転させる必要があります。前脚にかかる重力を利用して、膝を伸ばして脚を水平に回転させながら前に振り出します。
 軸足の股関節の外旋に引き続いて、膝の皿が前の方を向いて来たら(横向きから45度程度回転したら)軸足側の下肢の関節すべて(股関節、膝、足関節、足の指の関節)を一気に伸ばすことによって骨盤は速く回転します。骨盤の回転に伴って肩に水平方向の回転が得られます。

 垂直方向の円軌道を描くには上体の軸を少し2塁側に傾け、前脚にかかる重力によるトルク(回転力、力のモーメント)を利用して上体を起こしながら型に縦回転を与えます。

 肩の水平方向と垂直方向の回転速度の比率によって腕の角度が決まります。骨盤の回転速度が速ければ腕の角度は低くなりサイドハンドスローに近くなります。垂直方向の回転速度が主体になれば腕の角度は大きくなり垂直に近くなります。通常は両方の回転がバランスよく合わさり、スリークォーターになるのが最も多いパターンです。

 腕には慣性があるので、進む方向と逆の運動(上腕の内旋、肘を背中側に大きく引く動作「前足を着地寸前で行なうと非常に危険」)をさせると、肩関節、肘関節に大きなストレスがかかるので危険です。

 腕にはホームプレート方向のエネルギー(直線的エネルギーおよび回転エネルギー)を軸足の蹴り始めから積極的に与えることで、投球フォームはスムースに流れるようなフォームになり、怪我をしにくくなります。

 骨盤を回転させる際、等速度になると腕の遅れはなくなり、両肩と肘の位置は一直線上に揃うのですが、加速する際は腕の遅れが大きくなるので肩に大きなストレスがかかります。急加速は厳禁です。最初はゆっくりと、次第に回転速度を上昇させることが大事です。
 また、投球側の腕は肩で最初、引っ張るようにします。腕が両肩を結ぶ線からあまり遅れずに回転してゆくことがポイントです。

 肘をあまり曲げない投げ方をする人ほどこのポイントを意識する必要があります。この点に注意すれば、肘をあまり曲げない投げ方は肘に最もストレスがかからず、肩にも大きなストレスはかからず、トータル的に見て、最も怪我をしにくい投げ方だと思います。しかも球速も最も出やすいと思います。

 大リーグではボブ・フェラーの投げ方が参考になります。日本のプロ野球の投手では江夏豊投手の投げ方が参考になります。

江夏 豊投手(1967-1984)、通算206勝158敗、193セーブ、防御率2.49。『20世紀最高の投手の一人』、オールスターゲーム9連続三振、最高球速160キロ近かったと言われている。シーズン401個の三振記録はいまだ日本記録。
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江夏 豊投手のテイクバック(外野手型、ロングアーム型)
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江夏投手は1年目は肘を曲げたまま投げていました(内野手型、ショートアーム型)が、2年目からは肘を早めに伸ばして腕を長くして投げるようになり(外野手型、ロングアーム型)、肘の痛みもなくなり大投手へと一気に変身しました。マリアーノ・リベラ投手と同じテイクバックの方法です。2年目の20歳のとき、シーズン401三振という日本記録を達成しています。

 江夏投手は前側の脚の重力を利用して、骨盤を回転させながら軸足を蹴り始めていますが、肘を背中側に大きく引かないで(腕の慣性のため、加速でさらに後に引く力が発生するので)、肘も高く上げて(上腕の内旋が大きくなり、外旋させる仕事が必要になり前腕の遅れlay backが大きくなる)いません。

 球が速くて怪我をしない投手の投球側の肩の動く軌跡を見ると、ホームプレートに向けて直線的にはなっておらず、軸足の蹴り初めからフォロースルーまでスムースなカーブ(曲線)を描いています。江夏投手も同様です。最初から骨盤を回転させているおかげです。
 ソフトバンクの斉藤和巳投手の投球フォームと比較すると、その違いがよくわかります。斉藤和巳投手は前足を着地する直前まで骨盤を回転させていませんので、右肩の描く軌跡が直線的です。そのため肘を曲げて腕をムチのように使う投げ方になっています(内野手型、ショートアーム型)。これは日本の投手に多く見られる傾向で、松坂大輔、前田健太といった多くの投手がそうで、骨盤を回転させなかった分、前足を着地する直前に急激に腰を回転させざるを得ないので脇腹を捻りやすくなります。両投手が最近脇腹を痛めたのはそのせいだと思います。

 先発投手で最も平均球速が高いのはトミー・ジョン手術をしたワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグ投手の95.5マイルです。肘をムチのように使って、100マイル近い球を投げているので怪我をするのは避けられないのかもしれません。

右肩がボールのリリースまで直線的に前に進むステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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 2番目に球速が高いのはニューヨーク・メッツのマット・ハービー投手で、肘をあまり曲げない投げ方をしており、軸足で骨盤を積極的に回転させる投げ方をしており怪我もしにくい投げ方だと思います。

マット・ハービーの投球フォーム
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posted by BEST PITCHING at 09:08 | Comment(11) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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