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2013年06月22日

怪我をしやすい投球フォーム

 怪我をしないために守るべきポイント

前足着地時の正しいコッキングの位置

 オーバーハンド、スリークォーターの場合
 投球動作(コッキングの段階)で前足を着地したとき、投球側の前腕が垂直に立っていて、上体は開いていない(両肩を結ぶ線がホームプレートの方向を向いている)、投球側の肘の高さは両肩を結んだ線よりも高くならない。

 これは、怪我をせずに長い間活躍している選手の特徴です。

 では、このような投球フォームをしている選手を見てみましょう。

ニューヨーク・ヤンキースのマリアーノ・リベラMariano Rivera(43歳)
身長  6' 2" =約188 cm
体重 195 lb =約88.5 kg
通算629セーブ(大リーグ記録)、奪三振率8.3/9回、四球率2.0/9回
前足着地時のコッキングの位置
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フィラデルフィア・フィリーズのクリフ・リーCliff Lee(34歳)
身長 6' 3" =約190.5 cm
体重 205 lb =約93 kg
通算132勝80敗、奪三振率7.5/9回、四球率2.0/9回
肩、肘に大きな怪我はしたことがない。2008年アメリカンリーグのサイヤング賞受賞
前足着地時のコッキングの位置
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トロント・ブルージェイズのマーク・バーリーMark Buehrle(34歳)
身長 6' 2" =約188 cm
体重 230 lb =約104.3 kg
通算176勝136敗、奪三振率5.1/9回、四球率2.0/9回
球速は遅く速球で89マイルしかないが、制球が良く、怪我にも強く、2012年までに12年連続で2桁勝利、12年連続で200イニング以上投球している。
2007年ノーヒット・ノーラン達成。2009年完全試合達成。
前足着地時のコッキングの位置
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 3人に共通なのはテイクバックで肘を両肩を結ぶ線よりも高く上げず、かつ背中側に大きく引かないで、一度肘を伸ばすようにして素直に前腕を垂直に立てている点です。
 そのため肩、肘に大きなストレスがかかっていません。

怪我をしない投球フォームはコントロールも良い

 3人ともコントロールが良く、偶然にも3人の四球率/9回は2.0と低く、まったく同じだというのは注目に値します。

怪我をしないテイクバックの形

肘は一度まっすぐ伸ばすか、軽く曲げる程度にして、それから前腕を立てる(コッキングのトップ)
昔の投手はこの形が多かったように思います。大リーグでは現在でもこの形の投手は多くいます。日本では少なくなったようです。この形は物理的にも人体の解剖学的にも球速は出るし、怪我も少ないと思います。

マリアーノ・リベラのテイクバック
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クリフ・リーのテイクバック
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3人のコッキングのトップ(前腕を垂直に立てた状態)での肘の位置
 両肩を結んだ線よりも低い位置にあります。

大リーグ300勝投手のトップの肘の高さ
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 大リーグで怪我もなく長く投げて活躍した投手は同じくトップでの肘の位置は両肩を結んだ線よりも低くなっています。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソン、トム・シーバー、グレッグ・マダックスといった300勝以上を挙げた大投手はみんなそうです。
 みんな骨盤を回転させる投げ方をしているので、やがて肘の位置は遠心力で自然と両肩を結んだ線上に来て一直線に並ぶので問題はありません。

トップで肘の位置は高くしなければいけないという本当の意味

 これは紛らわしい表現で、上に上げた300勝投手たちと逆のことを言っています。すべての投球フォームでトップを高くすることは当てはまりません。逆に怪我につながる危険性があります。特に肘を高くして、背中側に大きく引いてしまうと肘、肩の怪我につながります。

 トップで肘の位置は高くしなければいけないという意味を自分なりに考えてみると、前腕を立てて肘を使い、上体の軸を傾けずに投げる場合にのみ当てはまる表現ではないかと思っています。ソフトバンクの摂津投手のような投げ方に言える表現だと思います。昔の投手では江川卓投手でしょうか。

ソフトバンク摂津投手のトップの肘の高さ
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 摂津投手はトップでの肘の位置が両肩よりも高くなっていますが、肘を背中側には大きく引いていません。
この投げ方で肘が下がってしまったら、下半身が使えず手投げになってしまいます。右投手の場合、肘を下げると重心の位置が3塁側にずれてしまい、前足を着地した際に左の股関節の位置が静止せず、体全体が3塁側に流れてしまい右肩の縦回転の速度も上がらず、肩、肘に大きな力を入れないと球速が上がらないためではないかと思っています。

怪我をしないために守るべきポイントが守られなくなる投球フォーム上の腕の形(テイクバックの形)

@inverted W(インバーティッド・ダブル、逆W)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Wをひっくり返した形になっている。
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inverted Wに関する記事はクリス・オリアリー氏のホームページChrisOLeary.comに詳しく解説が載っています。

THE INVERTED W DEFINED
Inverted W(逆W)の定義


I define the Inverted W as being more than 90 degrees of shoulder abduction with the Pitching Arm Side (PAS) elbow above the level of the shoulders (aka hyperabduction) combined with 5 or more degrees of shoulder horizontal adduction (PAS elbow behind the shoulders).
Inverted W(逆W)は肩が90度以上外転(腕を真下に下げた上体から腕を水平以上に上げること)して、投球側の腕の肘が肩の高さよりも高くなり(過外転とも言われる)、さらに肩は5度以上水平内転(投球側の腕の肘が肩よりも後にくること)すること

inverted Wはステファン・ストラスバーグ投手の投球イニング制限に関する話題ですっかり有名になったようです。最近ではセントルイス・カージナルスのアダム・ウェインライト投手が2009年、2010年にそれぞれ19勝、20勝を挙げたあと、2011年に肘の内側側副じん帯が断裂してトミー・ジョン手術を受けたこともinverted Wに関心が集まる理由です。アダム・ウェインライト投手は2013シーズン好調で9勝3敗(6月8日現在)の成績です。

inverted Wはピッチングコーチのポール・ナイマンPaul Nyman氏が大リーグに広めたようです。ノーラン・ライアン、ランディー・ジョンソンを指導した投手コーチのトム・ハウス氏もinverted Wの普及にかかわったようです。南カリフォルニア大学でも最近まで指導していたそうです。

ステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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断裂が起こる肘の内側側副靱帯の場所(前束)、右肘を体の内から外に向かって見た図
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inverted Wの問題点
 上のストラスバーグの連続写真に見られるように、前足を着地してから肘を急激に前に加速して押し出すので、前腕が急激に後に倒れる(lay back)。lay backの角度も大きくなり、肘の内側(小指側)の内側側副靭帯に急激に引っ張り応力がかかってしまう。繰り返し応力がかかることにより、靭帯の微小断裂が積み重なって行き、ある時点で靭帯断劽が起こり得ます。靭帯が断劽するときにはプチッという音(英語ではpop)が聞こえるそうです。

 上腕の動きを見ると、右肘を両肩を結んだ線よりも高く上げるので、このときに内旋が起き、続けて外旋(意識的に行なう能動的な動きと、慣性【前腕は同じ速度を維持しようとするが、肘は前腕よりも加速して前に進むため】による受動的な動きが重なる)が起き、lay back(前腕の遅れ)が最大になる。このとき、外旋も最大となる。これから、前腕は前に倒れて行く(内旋が始まる)。

 つまり、上腕には内旋、外旋、内旋という動きが順番に起きます。上腕の動き(回転角度の動く範囲)は大きくなるので、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れてしまいます。ストラスバーグ投手が前足を着地して、ボールを投げる側の前腕が垂直になった時の上体の向きをみると、ホームプレートの方向を向いています(体が開いてている、左肩の開きが早い)。また、内旋、外旋、内旋という動きが急速に行なわれるので(大きな加速度が生じる)、肩にも大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wの腕のフォームを作ってしまうと、下半身を使い、肩、肘に力を入れないで投げたとしても、大きなlay backが起こり、肩、肘には大きなストレスがかかってしまいます。

 inverted Wは肩、肘の強度が、十分にあれば効率的な投げ方と言えます。内野手とか投球数が少ない場合には、クイックで投げれて有効ですが、投手の場合、球速も速く、球数も多いので長期的な健康を考えた場合には問題があると言えるでしょう。

 ストラスバーグ投手のように、コッキング(前腕を垂直に立てる動作)のタイミングが遅れる度合いが大きい投手ほど、肩、肘に故障が出てくる時期は早まります。
 

アダム・ウェインライトの投球フォーム
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トミージョン手術を受けることになった藤川球児投手のカブスでの投球フォーム
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元ヤクルトスワローズ伊藤 智仁投手、150キロを超える速球と高速スライダーで強い印象を残したが、肘、肩の故障に悩まされ若くして引退(31歳で)。3度肩の手術を受けた。肘痛、ルーズショルダー(非外傷性肩関節不安定症)に悩まされ、デビューした翌年から2年間は一軍での登板はなかった。
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Inverted W(逆W)のフォームを作ると、肩関節を覆う関節包という繊維状の軟部組織の下部に無理な引っ張り応力がかかり、肩関節が緩くなりやすいそうです。肩の脱臼と同じ部分が損傷を受けるそうです。伊藤投手は3度目の手術の後、投球中に亜脱臼を起こしています。33歳の誕生日の前日に引退を表明。

元中日ドラゴンズのストッパー、最速157キロを投げた与田剛投手、肩、肘の故障で活躍できたのは数年間であった。
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inverted Wのフォームのため下半身が有効に使えていません。コッキング動作で右前腕が垂直になったとき(トップの位置)で上体が完全にホームプレートの方向を向いていて、腕だけで投げているために、肩、肘に大きなストレスがかかっています。

日本ハム武田 久投手、2013年6月2日右肘痛のため登録抹消された。
テイクバックで右肘が両肩よりも高くなり過ぎており、肘を痛めやすい投球フォームです。
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西崎幸広投手、日本ハム、西武に在籍していた。デビューして3年間は46勝を挙げ華々しい活躍をしたが、その後は安定した活躍は出来なかった。15年間で通算127勝102敗、22セーブ、防御率3.25の成績を残しました。近鉄の阿波野投手と新人王を争い、僅差で賞を逃してしまいましたが、通算勝利数では50勝近く上回っています。
 投球フォームを見直してみると、Inverted W(逆W)のテイクバックをしており、これが肩、肘に悪影響を与えたのではないかと思われます。
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Ainverted L(インバーティッド・エル、逆L)
ワインドアップからのテイクバックで両腕の形が英語の文字Lをひっくり返した形になっている。
inverted Lの定義:肘が両肩を結ぶ高さまで上がり、かつ肘が背中側に5度以上引かれている。
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2013年にトミー・ジョン手術を受けた吉見一起投手(中日ドラゴンズ)の投球フォーム
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テイクバックでinverted L(逆L)の形をつくると、inverted W(逆W)と同様、コッキング(前腕を立てる)動作のタイミングが遅れてしまい、肘、肩に大きなストレスがかかりやすくなります。
 前足を着地したときに、前腕がまだ垂直(地面に対して)になっておらず、前腕が垂直になったときには肩が開きすぎ、上体がホームプレートの方向を向いています(ストラスバーグ投手と同様)。

元中日ドラゴンズの左腕エース今中慎二投手、肩の故障のため30歳という若さで引退しています。
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ソフトバンク斉藤和巳投手、79勝23敗という脅威的な勝率を残している。右肩痛で3度の右肩腱板の手術をしている。まだ、現役は引退しておらず、コーチ契約中で、まだ現役へ復帰の可能性は0ではないようです。
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inverted L(逆L)のフォームをしている大リーグの現役200勝投手、ティム・ハドソン(37歳)
2013年6月14日現在、通算201勝110敗、通算防御率3.45、奪三振率6.06/9回、四球率2.70/9回
2008年8月にトミー・ジョン手術を受けました。
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Binverted V(インバーティッド・ブイ、逆V)

投球側の腕の形はinverted Wと同じだが、グラブ側の腕の肘は通常のフォームのように肩よりも高く上がっていません。

八木智哉投手、元日本ハム、現在オリックス・バファローズ在籍
日本ハム1年目は12勝を挙げ、パリーグ新人王に輝いたが、その後は肩痛に悩まされている。
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阿波野秀幸投手、近鉄、巨人に在籍していた。近鉄で15勝を挙げ、新人賞を獲得。3年間はすばらしい活躍をしたが、ピークはわずか3年であった。デビューして3年間で48勝を挙げたが、14年間で75勝68敗、防御率3.71の成績であった。八木智哉投手と同じくinverted Vのテイクバックをしており、コッキングのタイミングが極端に遅れる(肩が開く)のが長く活躍できなかった理由ではないかと思われます。骨盤も前足を着地する直前まで回転させないのも大きな原因です。
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まとめ

@テイクバックでinverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとると、内野手型、ショートアーム型の投球フォームとなる。

 肘関節を中心に前腕を高速で回転させる投げ方になり、肘に大きなストレスがかかって怪我をしやすくなります。また肩にも大きなストレスがかかります。

 肘を高速で回転させると、関節の軟骨も磨耗が激しく、肘を伸ばしたときに、関節内で骨と骨が急激に衝突するので、骨棘(骨の端がトゲのように出っ張ってくる)ができ、骨棘が欠けて分離したり(関節ネズミ)、骨折したりすることもよくあります。トミー・ジョン手術をする際は、同時に関節ネズミを取り出すこともよく行なわれます。

Ainverted W,inverted V,inverted Lといったフォームをとる投手には軸足を蹴り出すときに、前足を着地させる直前まで、骨盤を回転させずに投げる投手が多いので、このことがさらに怪我をしやすくしています。

B肩、肘は円を描くような動きが大事

テイクバックで肘は円を描くようにしなければいけません。

肩が円軌道を描くには、どうすればよいのか?

 円軌道を水平方向(横回転)と垂直方向(縦回転)に分けて考えます。

 水平方向の円軌道を描くには骨盤を軸足の蹴り初めから回転させる必要があります。前脚にかかる重力を利用して、膝を伸ばして脚を水平に回転させながら前に振り出します。
 軸足の股関節の外旋に引き続いて、膝の皿が前の方を向いて来たら(横向きから45度程度回転したら)軸足側の下肢の関節すべて(股関節、膝、足関節、足の指の関節)を一気に伸ばすことによって骨盤は速く回転します。骨盤の回転に伴って肩に水平方向の回転が得られます。

 垂直方向の円軌道を描くには上体の軸を少し2塁側に傾け、前脚にかかる重力によるトルク(回転力、力のモーメント)を利用して上体を起こしながら型に縦回転を与えます。

 肩の水平方向と垂直方向の回転速度の比率によって腕の角度が決まります。骨盤の回転速度が速ければ腕の角度は低くなりサイドハンドスローに近くなります。垂直方向の回転速度が主体になれば腕の角度は大きくなり垂直に近くなります。通常は両方の回転がバランスよく合わさり、スリークォーターになるのが最も多いパターンです。

 腕には慣性があるので、進む方向と逆の運動(上腕の内旋、肘を背中側に大きく引く動作「前足を着地寸前で行なうと非常に危険」)をさせると、肩関節、肘関節に大きなストレスがかかるので危険です。

 腕にはホームプレート方向のエネルギー(直線的エネルギーおよび回転エネルギー)を軸足の蹴り始めから積極的に与えることで、投球フォームはスムースに流れるようなフォームになり、怪我をしにくくなります。

 骨盤を回転させる際、等速度になると腕の遅れはなくなり、両肩と肘の位置は一直線上に揃うのですが、加速する際は腕の遅れが大きくなるので肩に大きなストレスがかかります。急加速は厳禁です。最初はゆっくりと、次第に回転速度を上昇させることが大事です。
 また、投球側の腕は肩で最初、引っ張るようにします。腕が両肩を結ぶ線からあまり遅れずに回転してゆくことがポイントです。

 肘をあまり曲げない投げ方をする人ほどこのポイントを意識する必要があります。この点に注意すれば、肘をあまり曲げない投げ方は肘に最もストレスがかからず、肩にも大きなストレスはかからず、トータル的に見て、最も怪我をしにくい投げ方だと思います。しかも球速も最も出やすいと思います。

 大リーグではボブ・フェラーの投げ方が参考になります。日本のプロ野球の投手では江夏豊投手の投げ方が参考になります。

江夏 豊投手(1967-1984)、通算206勝158敗、193セーブ、防御率2.49。『20世紀最高の投手の一人』、オールスターゲーム9連続三振、最高球速160キロ近かったと言われている。シーズン401個の三振記録はいまだ日本記録。
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江夏 豊投手のテイクバック(外野手型、ロングアーム型)
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江夏投手は1年目は肘を曲げたまま投げていました(内野手型、ショートアーム型)が、2年目からは肘を早めに伸ばして腕を長くして投げるようになり(外野手型、ロングアーム型)、肘の痛みもなくなり大投手へと一気に変身しました。マリアーノ・リベラ投手と同じテイクバックの方法です。2年目の20歳のとき、シーズン401三振という日本記録を達成しています。

 江夏投手は前側の脚の重力を利用して、骨盤を回転させながら軸足を蹴り始めていますが、肘を背中側に大きく引かないで(腕の慣性のため、加速でさらに後に引く力が発生するので)、肘も高く上げて(上腕の内旋が大きくなり、外旋させる仕事が必要になり前腕の遅れlay backが大きくなる)いません。

 球が速くて怪我をしない投手の投球側の肩の動く軌跡を見ると、ホームプレートに向けて直線的にはなっておらず、軸足の蹴り初めからフォロースルーまでスムースなカーブ(曲線)を描いています。江夏投手も同様です。最初から骨盤を回転させているおかげです。
 ソフトバンクの斉藤和巳投手の投球フォームと比較すると、その違いがよくわかります。斉藤和巳投手は前足を着地する直前まで骨盤を回転させていませんので、右肩の描く軌跡が直線的です。そのため肘を曲げて腕をムチのように使う投げ方になっています(内野手型、ショートアーム型)。これは日本の投手に多く見られる傾向で、松坂大輔、前田健太といった多くの投手がそうで、骨盤を回転させなかった分、前足を着地する直前に急激に腰を回転させざるを得ないので脇腹を捻りやすくなります。両投手が最近脇腹を痛めたのはそのせいだと思います。

 先発投手で最も平均球速が高いのはトミー・ジョン手術をしたワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグ投手の95.5マイルです。肘をムチのように使って、100マイル近い球を投げているので怪我をするのは避けられないのかもしれません。

右肩がボールのリリースまで直線的に前に進むステファン・ストラスバーグの投球フォーム
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 2番目に球速が高いのはニューヨーク・メッツのマット・ハービー投手で、肘をあまり曲げない投げ方をしており、軸足で骨盤を積極的に回転させる投げ方をしており怪我もしにくい投げ方だと思います。

マット・ハービーの投球フォーム
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posted by BEST PITCHING at 09:08 | Comment(11) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
沖縄で少年野球のコーチをしています
毎年、肘を剥離骨折したり野球肩に
なったりと故障が多いのですが
子供にわかりやすく負担がかからない
投げ方を教えるにはどうすればいいでしょうか?
Posted by たく at 2013年06月24日 09:16
速球の研究をしています。
是非、お話をしてみたいです。
現場の指導も行い実績はあります。
メールお待ちしています。
Posted by 連絡希望 at 2013年07月03日 10:17
質問内容:
子供にわかりやすく負担がかからない投げ方の教え方

回答:
 利き腕と反対側の腕で楽に投げれて、疲れ、痛みを翌日に残さずに、また習得に時間がかからないとすれば、その教え方は良いと言えます。

 私は右利きなので、左腕でいろいろ試してみました(シャドウピッチングですが)。
 翌日に結構痛みが残りました。
 三角筋が痛みました。重力に逆らって腕を持ち上げるのは非常に負荷がかかります。しかも加速させながら行なうので、腕の重さの何倍もの力がかかるからです。


 最も一般的なスリークォーターの投げ方を右投手で説明します。

 この方法では右肩の縦回転をまず行い、前足を着地するちょっと前に軸足の強い蹴りで骨盤を素早く回し、右肩の横回転を加え、スリークォーターの投球フォームを作ります。

 子供に教えるときに最も大事なポイント

 立った姿勢から軸足(右足)に体重をかけ、マウンドからホームプレートに向けてかけっこをすることを考えて見ましょう。
 ヨーイドンで素早いスタートを切るには軸足の向き(爪先、膝の皿の向き)を通常の投球のように投球プレートと平行にするよりも、並行よりも30度程度前(ホームプレート方向)に向け上体を半身に構えるのが自然なやり方だと思います。

@軸足の向きを投手プレートに平行よりも20から30度ホームプレート側に向ける。

 これが最も大事なポイントです。

 この軸足の向きから軸足を蹴り出したときの骨盤の動きに注目しましょう。
 骨盤が前に移動するとともに、自然と水平方向に回転してゆくでしょう。このとき、右腕を後に引いて、前腕を垂直に立てた状態(初期のコッキング完了)で、上体を前傾させて行なうと大体の投球フォームが出来上がります。

Aストライドは大きくしない。

 前足を踏み出すストライドは最初は肩幅よりも少し広い程度から徐々に広くしてゆきます。 ストライドが大きすぎると上体が回りすぎて怪我をしやすくなります。
 ストライドはバッティングのように大きくしないで(両足が地面に同時に着いている時間が長いほうが良い)、前足が着地した後、軸足を前足よりも一歩踏み出すようにして、右肩が円を描いて速く大きな距離移動するようにします。

B上体を十分前傾させ重力を利用する。

 上体が前傾していること(ホームプレート方向に)が大事です。重力を利用して上体が前に倒れるようにするためです。上体が起きたままだと重力を利用できず、リリースポイントが後ろに来て手投げになり、怪我をしやすくなります。

C前足を着地して肘の位置が一番高くなったときの肘の位置は両肩を結んだ線上にあるようにします。
 これよりも高くなるほど、棘上筋腱や肩峰下滑液包が骨にぶつかったりして摩擦が大きくなる(インピンジメント、衝突という意味)現象が起き炎症の程度が大きくなります。

D前足を着地して膝が伸びたときの前脚の軸の角度は後ろから見たときに、垂直になっていることが大事です。(骨盤の水平方向の回転が速くなるので)
 フィギュアスケートのスピンでは回転軸上に重心が来て、手足を回転軸に近づけるほど回転は速くなります。軸が3塁側に傾くと重心が回転軸から離れてしまうので骨盤の回転が遅くなり、球速が上がりません。そのため、どうしても腕を強く振るようになり怪我をしやすくなります。
 軸が少し一塁側に傾くと骨盤の回転は上体に働く重力のためにもっと速くなりますが、それは最初から必要ではありません。



Eストライドを大きくしてゆく際に、前足を着地したとき、両肩を結んだ線がホームプレート方向を向いていて、右の前腕が垂直になっていること。(マリアーノ・リベラのように)

F軸足で体重を支え、前足を上げて、上体を前傾させながら、軸足側の股関節、膝関節、(膝は軽く曲げる程度の方が効率が良い)、足関節、足の指の関節を、前足が着地する少し前に一気に伸ばします。このタイミングを調節して、上体が開かないようにします。(➅を守るために)
 
 最初は@の角度を大きめに、かつストライドは小さめで、上体の前傾を大きく、前足を着地した後の軸足の踏み出しを大きくするのが良いでしょう。


 以上のポイントを1つのイメージにまとめてみましょう。

 前側の股関節(左)と右肩を結んだ線を一本の竿と考えます。そして、竿にぶら下がった糸と重りを腕とみなし、竿をスウィングして糸と重りを飛ばすようにして投球をします。
 糸と重り何もしなくても前に飛んでゆきます。つまり、腕は意識して振りに行かなくても良いということです。

 この竿を前側の股関節を中心にいかに速くスウィングするかで球速が決まります。腕を振るという意識は捨てましょう。球速を上げるには腕を強く振るのではなく、下半身を中心に使って(上半身を腹筋を使って前に強く倒すことも大事)この竿を速くスウィングすることです。

 マリアーノ・リベラの投球フォームで、軸足の向きを@のように従来よりも前に向けて、ストライドを小さめに行なってください。前足を上げるとき、前足側の膝は大きく軸足の膝の上まで回さないほうが良いでしょう。前脚の膝の向きは投球プレートと平行でよいです。上体が前脚の重さで前に早く傾くようにするためです。そうすると前脚の重さで骨盤の回転が緩やかに起き、軸足側の膝の向きがより前を向くので軸足を強く蹴れるようになり、骨盤は素早く回転します。
Posted by sh(管理人) at 2013年07月03日 21:21
いつも楽しみに読ませていただいております。

肘に負担のかかりにくい投球フォームだと紹介されていたメッツのマット・ハービー投手が右肘靭帯を部分断裂して12〜24カ月は復帰できないと報道されておりました。やはりあれだけの球速ですからどうしても負担があるのかな。

そう考えると、今さらながらマリアーノ・リベラの強靭さは凄い!事故で右膝こそ怪我をしましたが肩・肘は殆ど故障なしでしょう。

投球フォーム的に見て、ハービーとリベラに大きく異なる点は何かありますか。
Posted by 投球フォーム研究中 at 2013年08月29日 05:40
メッツのマット・ハービー投手が右肘靭帯を部分断したそうで、大リーグ全体に大きな衝撃を与えたようです。私自身も、衝撃を受けました。
 マット・ハービーの平均球速は95マイルを超えており、大リーグでもトップです。そのためか、想像以上に体に負荷がかかっていたということです。
 8月24日のタイガース戦で13安打された時に、右の前腕に異常を感じたそうですが、それ以前にも今シーズンは違和感を感じていたそうです。
 マット・ハービーとマリアーノ・リベラと大きく違うのは、マット・ハービーは前足を着地してから上体をホームプレート方向に倒す動きが少ない点です。重力を利用して上体を前に倒す動きが少なく、肩が縦に回転する動きが小さいと思います。そのため、ボールのリリースポイントが前足を基準にして、リベラよりも後ろにあるように見えます。
 マット・ハービーは最初から上体が前傾したままで、最後は一塁側に上体が向いている感じです。ロイ・ハラデイの投球フォームに似ていると思います。彼の投球フォームを参考にしたのでしょうか。今後、手術したほうがよいかどうかを、ハーベイはハラデイに相談するそうです。
Posted by sh(管理人) at 2013年08月30日 00:47
初めまして。アメリカの大学で投手をしているものです。怪我をしないテイクバックの形などはサイドアームやサブマリンでも同様というのもちろんだと思うのですが、具体的にサイドサブマリンのサンプルの投手などがいたら教えて下さい。よろしくお願いします。
Posted by usaballer at 2013年10月20日 12:38
すみません。記事の初めにオーバーハンド、スリークォーターの場合と書いていました。サイドやアンダーの場合はどう思われますか?
Posted by usaballer at 2013年10月25日 03:00
 怪我をしないテイクバックの形について

 オーバーハンド、スリークォーターの場合については、重力に逆らって腕を上げる(コッキング)というのが大きな負担になるので、腕の位置は肩関節の可動域の限界に来ないように余裕を持って腕が動くように注意する必要があります。
 肘は肩関節を振り子の支点として、重力を利用してスイングし、上腕の角度が水平より45度近くになったら、肩関節が円を描くように加速させれば重力に負けずに、水平よりも高く上がります。肩関節の軌道が水平であれば腕も水平に、肩関節の軌道がスリークォーターであれば、腕の角度もスリークォーターになります。
 速い球を投げる人ほど、腕の質量による慣性モーメントを小さくするために、腕は体から大きく離さないほうが良いです。肘が小さな円を描くテイクバックで十分です。

 サイドハンドの参考にしたい投手は、昔の投手のウォルター・ジョンソン、ボブ・フェラー(オートバイと競争して球速100マイル近くを出したといわれたとき、サイドハンドで投げた)。
 アンダーハンドでは阪急の山田久志投手です。


ボブ・フェラーのサイドハンド
http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=knbsYEA0Eu0
<iframe width="640" height="360"

ウォルター・ジョンソンのサイドハンド(ややアンダーハンド気味)
http://www.youtube.com/watch?v=imwUHeuVqME

山田久志投手のアンダーハンド
http://www.youtube.com/watch?v=TAZTv1Bt75w

このウォルター・ジョンソン、山田久志投手はいずれもボーリングのテイクバックを上体を前かがみにして、体を横にひねりながら行なっています。重力による腕のスウィングを利用しており、また腕を前にスウィングするときには肘を大きく曲げないので、肩、肘に負担はかからない投球フォームです。また、前かがみになった上体を起こして骨盤の回転を利用しているので、エネルギー効率も良いと言えます。
 山田久志投手のアンダーハンドでは深く前かがみになった上体は完全には地面に垂直近くにまで起きていません。
 上体の前かがみになった傾きを30度程度にして、体を完全に垂直に起こしてアンダーハンド、あるいはサイドハンドは、骨盤の回転をバッティング(バリーボンズのように)のように速く行なえば球速は100マイル近く出そうで、なおかつ肘、肩に負担がかからない投球ができそうで、非常に興味があります。
 ソフトボールの投手であれば、女子でも140キロ以上、上野投手であれば150キロ近くを出しても不思議ではないと思っています。
Posted by sh(管理人) at 2013年11月23日 15:35
野球をやるわけじゃないけれど、ドッジボールの投げ方の参考にさせていただくわw
Posted by ウェルカム at 2014年12月28日 22:11
三浦投手ってどうなのでしょう
Posted by TNOK at 2016年10月06日 13:36
昨年、アメリカでベストセラーになったJeff Passan氏の著書”The arm”では、
このInverted W理論は逆に疑問が投げかけられていますが、いかがでしょうか。
Posted by ゆういち at 2017年11月12日 00:47
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