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2013年08月11日

藤浪 晋太郎投手の投球フォームについて

 藤浪投手の投球フォームで、前足の着地がクロスステップ(インステップ)していて良くないという記事があったというコメントをいただきました。股関節が3塁に向いているのに上半身はホームプレート方向に向いているので、体を無理に捻ることになり体に良くないという内容だそうです。

阪神タイガース藤浪 晋太郎投手の投球フォーム
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 果たしてインステップは良くないのか?

 この記事は日本のヤフーニュースにあったということですが、すでに閲覧不能になっており読むことができませんでした。
 日本と大リーグでは投球フォームが大きく違うので、個々の投球フォームについて良し悪しを判断しなければ意味がありません。

 日本では骨盤を前足が着地する直前まで回転させないで(ヒップファースト)、しかも骨盤の回転自体も緩やかで、下半身はあまり回転させずに、横を向いた上半身の捻りをホームプレート方向に戻すような投球フォームの人が多いようで、このような投球フォームの人がインステップで投げれば脇腹を痛めたりするかもしれません。前足の着地寸前まで骨盤から上に回転慣性を与えていないからです。質量のある物体を回転させるには時間がかかりますので、投げ始めから骨盤は回転させたほうが投球が円滑に行なえます。

 慣性には体の重心がホームプレートに向かう直線的な慣性と、体の軸を中心に体が回転する回転慣性があります。慣性とは同じ状態を維持しようとする性質で、質量のある物体は同じ速度(大きさと向き)を維持しようとします。回転している物体も同じ回転速度を維持しようとします。抵抗がなければ永遠に回転し続けようとします。止まっている物体を回転させるにはトルク(回転力、力のモーメント)が必要で、動き始めに大きなトルクが必要です。一定の速度を維持するだけであればトルクは必要ありません。つまり、回転し始めには大きなトルクが必要なので、投球の最初から骨盤を回転し始めた方が、前足を着地した後に骨盤は楽に加速でき、投球側の肩の水平方向の回転速度も速くなるということです。

 日本の投手は直線的な慣性が主体(骨盤を回転させないで体の重心を直線的に前に移動させる)で回転慣性が不足している人が多いようです。

 一方、大リーグの投手は骨盤を最初から回転させてゆく投げ方が多く、オーバーハンドの投手でもサイドハンドの投手でも同様です。
 ストラスバーグ投手は骨盤を回転させない投げ方をしています。松坂投手も同じです。こういう投げ方は肩、肘に負担がかかってしまいます。
 

 大リーグではインステップで投げる投手もいれば、アウトステップで投げる投手(グレッグ ホランドGreg Holland )も、さらにはその間のスクエアで投げる投手(マックス シャーザーMax Scherzer)もいて、どれが良くてどれが悪いとは言い切れません。個人の好みの問題です。
 ただ、全体的に見て、100マイル近い球速でコントロールの良い投手はインステップが多いように思えます。

 アウトステップの投手

 グレッグ ホランドGreg Holland 、カンザスシティー・ロイヤルズのクローザー
 8月9日現在の成績は、2勝1敗、31セーブ(33セーブ機会)、四球率2.5/9回、奪三振率14.3/9回
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一塁側に体が急激に倒れるように一見、見えますが、スローで見ると、体が一塁側に倒れるのはボールがリリースされてホームプレートに近づいてからであることがわかります。上体を前に倒しながら骨盤も急激に回転すると、上体はこのように急激に一塁側に倒れます。

 インステップで100マイルの球を投げる大リーグの投手

アトランタ・ブレーブスのクレイグ・キンブレルCraig Kimbrel
ニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt Harvey
デトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダーJustin Verlander
クリーブランド・インディアンスのダニー・サラザールDanny Salazar

クレイグ・キンブレルの投球フォーム(上から見た動画)
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マット・ハービーの投球フォーム
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ダニー・サラザールの投球フォーム
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インステップの利点

 右投手の場合で説明します。
 インステップが利点になるには、ワインドアップで前足を高く上げた状態から、前足を素早く下ろすとともに骨盤も同時に回転させていかなければいけません。マット・ハービー、ダニー・サラザール両投手とも、前足を前に振り下ろすのがとても速く、骨盤も同時に回転させています。また投球側の腕も同時に素早くテイクバックして、コッキング(前腕を垂直に立てる)しています。また、前足を着地したとき、上体が後に傾いていません。前足を着地してから素早く上体を前傾させ、上体に働く重力の作用で肩の回転を加速させなければいけません。
 マット・ハービー、ダニー・サラザール両投手ともコッキングが素早く、両肩と右肘がほぼ一直線に並んだまま上体を素早く回転させているので、肩にかかるトルク(回転力、力のモーメント)は極力抑えられているため、100マイル近くの球をコントロール良く投げられるのでしょう。

 骨盤が速く回転すると、横に伸ばした腕の遠心力で体が3塁側に流れて、前脚と右腕の距離がますます離れて、骨盤の回転速度は緩くなってしまいます(前脚を軸とした慣性モーメントが大きくなるので)。回転を速くするには体の各部分をできる限り回転軸に近づける必要があります。そのためには上体の軸を一塁側に傾ける必要があります。

 ボールのコントロールを良くするには、頭をできるだけ動かさないようにしなければいけませんが、そのためには、前足の着地方向は軸足とホームプレートを結んだ線よりも少し3塁側にし(インステップ、クロスステップ)、前足を着地してからは頭はホームプレート方向に向けるのが理にかなっています。頭はホームプレート方向に向かい、上体の軸は一塁側に傾き、前脚を軸とした慣性モーメントが小さくなるので骨盤の回転も速くなります。その結果、右肩の水平方向の回転も速くなり、球速が出やすくなります。

 アウトステップではどうしても視線がホームプレートから遠ざかってしまうので、ボールのコントロールはインステップに比べて不利だと思います。

藤波投手が100マイルの球を投げれるようになるにはどうすれば良いのか

 藤波投手は日本のプロ野球投手の中では、体の重心の位置が前脚の上を通り、上体が3塁側に流れることもあまりなくバランスの良い投球フォームだと思います。少し修正すればすぐに大リーグの投手のように90マイル後半の球速が出そうです。

@前足を振り下ろす速度を速くする。

 マット・ハービー、ダニー・サラザール両投手に比べて非常に遅いため、骨盤の回転も非常に遅くなっています。

Aストライドを小さくする。

 ティム・リンスカムの影響か(テイクバックが似ている)ストライドが必要以上に大きくなっており、骨盤が回転せずに前に移動するだけになっています。 マット・ハービー、ダニー・サラザール両投手のように、前足と軸足が同時に地面についている時間のあるほうが楽に、またコントロール良く、球速が出ると思います。
 本人はボールのリリースポイントをできるだけ打者に近づけたくてストライドを大きくしているようですが、これはあまり効率の良い方法ではないと思います。

Aテイクバック、コッキングはもっと素早くした方が良い

 コッキング(右の前腕を垂直に立てること)のタイミングが少し遅いように感じます。そのため、腕に力を入れて振っているように見えます。両肩と右肘が素早く一直線上に来るようにして、骨盤を素早く回転させればマット・ハービー、ダニー・サラザール両投手のように、腕は意識して振らなくても済みます。
posted by BEST PITCHING at 00:23 | Comment(13) | TrackBack(0) | MLB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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